老犬の介護のしかた〜いつまでも元気でいるためにできること〜

コラム

愛犬が散歩に興味を示さなくなった、トイレを失敗することが増えたなんてことがあるなら、もしかしたらそれは老犬になったサインかもしれません。犬も人間と同様、年老いてくると身体能力が衰えたり病気にかかりやすくなってしまいます。今は元気なワンちゃんでも、いつかは老犬になり、飼い主のサポートが必要な時がやってきます。

その時になって慌てたりしないように、今回は老犬の介護について説明していきます。この記事を見て、自分のワンちゃんが少しでも健康でいられるようにちゃんとしたサポート知識を身につけましょう。

老犬の介護が必要になる年齢ってみんな同じ?

犬にも当然寿命があり、それに応じて青年期やシニア期があります。飼い主としては、いつまでも愛犬と一緒に暮らしたいものですが、残念ながら犬の平均寿命は10~13年ほどとされています。それを踏まえて、ほとんどの施設では7歳あたりからシニア期として見ることが多いようです。

犬のサイズや犬種によって微妙に異なる

犬の体格や犬種によって、3~4年ほど平均寿命が変わっていきます。一般的にトイプードルなどの平均寿命は約14歳、ゴールデンレトリバーなどの大型犬の平均寿命は約11歳ほどとされており、さらに犬種によっても平均寿命に差があります。

また、近年は健康グッズやバランスの良い食事、室内飼いによる様々なリスクの低下などによって徐々に平均寿命が伸びてきているとのデータもあり、これらを参考にすることで愛犬を少しでも長生きさせられるかもしれません。

特に室内飼いによって平均寿命が伸びる傾向が強いのは知らなかった人もいるのではないでしょうか?犬にとって外は散歩などで健康的になれる反面、常時外にいると感染症や熱中症などのリスクがあり、さらには急な事故に見舞われる可能性もあります。

また、飼い主がすぐそばにいる室内のほうが、犬の変調にすぐに気づきやすいことも長生きできる要因との意見も。大型犬はサイズ的に難しくても、小型犬はなるべく室内飼いの方が良いでしょう。大型犬は、遊ぶときだけ外に行かせるなどの対策をしておけば室内飼いできるかもしれませんね。

明確な判断基準はない

ここまで説明しておいて、明確な判断基準がないことはないだろうと思われるかもしれませんが、ドックフードの表記などでもシニア期の年齢が異なっていたりと、実際に基準はかなり曖昧です。

なぜなら、犬種やサイズだけではなく、犬自体の健康状態や運動能力など総合的に判断しなければいけないからです。これは人間で例えた方がわかりやすいでしょうか。

人間のお年寄りでも、マラソンや登山などアクティブな活動をしている人と、家に引き篭もっていたり、腰痛や持病持ちの人を同じシニアとして対応したりはしません。これは犬でも同じ事が言えるのです。

むしろ、犬の年齢だけで判断してしまうほうがリスクが高いです。たとえば、まだまだ元気なのに散歩の時間を減らしてしまったり、逆に衰えてきたのに散歩の時間が長めだったりすると、犬に余計なストレスを与えてしまいます。

老犬介護が必要になるタイミング

自分の愛犬がシニア期に入ったかどうかは、老犬になると起こる様々な変化を見極めることで判断できます。分かりやすいものでは、散歩に行こうとしても中々ついて来なかったり、食事量が極端に減ったりなどですね。

ここからは、そんな老犬に起こり得るサインの中でも、特に重要な項目をいくつかご紹介していきます。もし愛犬に当てはまる項目が多かったら、それは老犬になった合図かもしれません。

睡眠時間の増加

成犬の平均睡眠時間はおよそ12時間前後と言われていますが、老犬は19時間とかなり長く1日のほとんどは眠った状態になります。もちろん、急に睡眠時間が伸びるわけではなく、徐々に伸びていきます。逆に、急に伸びるようになったらそれは病気のサインかもしれませんので、すぐに獣医師さんのところに連れていきましょう。

これは犬がもともと夜行性だったことに起因するもので、動く理由がない、暇な昼時でも寝るためとも言われています。そんな場合は、頭や体を普段から適度に働かせることが体力や健康維持に効果的です。

ただし、体力回復のために寝ている場合やなにか病気になった場合も睡眠時間は伸びます。なんのために寝ているのか分からない場合は、無理をせずに診察してもらうことも大切です。

食事関連

年老いてくると、食欲不振になったり自力でご飯が食べれなくなったりします。また、病気や消化不良で嘔吐が増える事も…。食事関連でなにか異常があった場合はすぐに診察することが大切です。

また、筋肉が衰えているせいで食事中に無理な姿勢になっていることもあります。その場合はご飯台などを設置することで負担を軽減できますので覚えておきましょう。

ご飯に対して関心がなくなる場合もあります。これは味覚や嗅覚が衰えているせいでご飯が美味しく感じられなくなるためです。そういった時は嗜好性の高い食事にしたり、食べやすくするために水分を含ませることで解決することがあります。

無駄吠え・夜鳴きの増加

老犬になると認知症や感情のコントロールが不安定になるなどの要因で無駄吠えや夜鳴きが増えてきます。そのままにしておくとご近所トラブルになりかねないですが、病気以外の場合は吠えるのを辞めさせるのは難しいです。

吠える回数が増えるのにはいくつか要因が考えられますが、病気やケガによる痛みや精神面での不安の場合はそれらを解消することで対策できるかもしれません。その場合は獣医師に相談して適切な対応を心掛けてください。

脚力の低下

階段を登ったり降りたりするのを躊躇したり、お尻が下がっていたりしませんか?それは筋肉が衰え、脚力が低下しているサインです。そのままにしておくと病気のリスクも上がりますが、かといって無理に運動させるとケガに繋がることもあり、運動させることを躊躇してしまうこともあるでしょう。

しかし、犬の状態に合わせて適切な対応をしていけば長く健康な体を作ることもできます。後々詳しく説明しますが、散歩の時間を短くする代わりに回数を増やすなどが効果的です。

トイレの失敗

老犬になるとトイレ、すなわち排泄の失敗が増えていきます。特に決まった場所で排泄を行えないケースが多く、飼い主もどうすれば良いのか分からないなんてお話をよく耳にします。

対策としてはまず、トイレの場所を確認することが大切です。脚力が衰えているにも関わらず、フローリングのような滑りやすい場所に配置していませんか?また、マットを引いているとそこをトイレだと勘違いして排泄してしまうこともあります。

また、もし便秘だったり下痢の場合は病気の可能性があります。その場合はすぐに獣医師に診てもらいましょう。

病気(認知症や白内障など)

老犬も人間と同じく認知症や白内障にかかります。もし、徘徊癖や夜鳴き、昼夜逆転などをするようになったら認知症の疑いがあります。認知症への対策はとにかくかかる前に予防をしっかりすること。日光浴、運動、昼寝を無くす、スキンシップを忘れないなど、普段からしっかりと対策しましょう。

もし、愛犬が認知症にかかってしまった場合、安易にサプリやお薬に頼ってしまうと、愛犬の体によっては効果がなかったり、逆に寿命を縮めてしまう恐れがあります。もし認知症になったら獣医師さんとよく話し合って、きちんとした対応をすることが大切です。

老犬介護に必要なこと

人間にとっては10年は長いようで短い期間ですが、犬にとっては人生の終盤です。去年や一昨年まで元気だった愛犬が、急に老犬になってショックを受ける飼い主もいらっしゃるでしょう。しかし、老犬になったとしても飼い主さんの愛する家族であることに代わりはありません。人生の最後の最後まで幸せな生活を送らせてあげるためにも、しっかりとサポートしましょう。

バリアフリーにする

まずは室内をバリアフリーにすることが最優先です。老犬となったワンちゃんにとって、いままで普通に過ごしてきた室内でもまるでアスレチックのように見えるでしょう。

脚力の低下、視力や聴覚の低下によって障害物を避けたり、階段を登ったり降りたりできなくなったりします。衝突してケガをしないように、家具や壁の角にコーナーガードなどを取り付けて、当たってしまったときに衝撃を受けないような処置をしてください。

また、物と物との隙間を無くすことで挟まる危険性を減らすことも重要です。

なるべく一緒にいる

病気やケガをいち早く確認できるためというのもそうですが、なにより愛犬が不安にならないために一緒に居てあげることが大切です。特に目が見えなかったり、耳が遠くなった犬にとっては、たとえすぐそばに飼い主がいたとしても遠く感じて怖くなってしまっていることでしょう。

緊急時以外は近くで撫でたり、寄り添っているだけでも愛犬は元気になります。もし、どうしても留守番させなきゃいけない場合は、飼い主の匂いがついた衣類なんかを体に掛けてあげると効果的です。

散歩に気を付ける

老犬となったとしても、散歩は健康維持のために欠かせません。運動しないと肥満になったり、元々衰えて始めていってる筋肉がさらに弱くなったりします。元気な老犬とあまり元気ではない老犬とでは散歩の方法も変わってくるので、自分の愛犬はどちらなのかをしっかり把握しましょう。

元気な老犬の場合は、1回10分程度の散歩を1日3回程度に分けて行いましょう。そのままなんも問題がないようであれば、特にこれといって気をつけることはありませんが、事故やケガにだけは要注意です。

あまり元気でない老犬の場合は、ペットカートなどを利用しましょう。初めに軽く歩かせて、無理そうならペットカートに乗せて散歩するだけでも良いリフレッシュになります。また、転倒などを防ぐためにハーネスを使用できるとより安心です。

寝たきりへの対応

愛犬がとうとう寝たきりになった時は、今まで以上に時間と労力を使うことを予め覚悟しておいてください。お尻は毛をカットして常に清潔に、汚れがあったら蒸しタオルなどで汚れを拭くことも忘れずに、入浴は愛犬の体力も考慮して部分浴で根気よく洗いましょう。

また、床ずれには最大限の注意を払う必要があります。その場合は通気性の良い、適度に反発するマットなどを利用すると愛犬の負担が減ります。寝返りをさせる際は、1度抱きかかえてから反対側に向かせるようにすると内臓への負担が少なくなります。

老犬専門の施設を利用する

仕事の関係やプライベートの関係でどうしても介護の時間が取れない場合は老犬専用ホームなどの施設の利用も検討しましょう。飼い主本人がきちんとお世話したい気持ちも分かりますが、ペットの負担も考慮して、施設を利用した方が適切な場合もある事も忘れないで下さい。

老犬になっても介護していつまでも一緒に

愛犬と共に生き、愛犬と共に死にたい…そんなご家族様も多いと思います。ですが、どうしても犬の寿命の方が先に尽きてしまうことの方が多いでしょう。ならせめて、いつかお別れがきてしまうその時まで愛犬が幸せに暮らせるようにサポートする事が、飼い主ができる精一杯の努めだと私は考えます。

この記事を見て、少しでもご家族様と愛犬が共に過ごせるようになれば幸いです。