黒い耳垢が大量に出ていたり、ペットがしきりに耳を掻いていたら、もしかしたら耳ダニ症にかかっているかもしれません。
そのまま放置してしまうと、耳が炎症を起こしたり、細菌感染のリスクが高まってしまいます。
今回はそんな耳ダニ症を引き起こすダニの正体や症状についてお話していきます。
犬猫の『耳ダニ』の正体・原因
耳ダニは名前の通りダニではありますが、実はちゃんとした名前があります。
耳ダニについて詳しく知りたいなら、まずはその正体や原因(感染経路)について知っておいた方がいいでしょう。
耳ダニの多くはミミヒゼンンダニ
犬や猫の耳に寄生するダニは、そのほとんどがミミヒゼンダニと呼ばれるダニだと言われています。このダニが寄生する事で起こる病気を耳疥癬(かいせん)と呼び、耳の皮膚の表面をかじる事で強い痒みが出る他、吸血される事で強いアレルギーや炎症を引き起こすのが特徴です。
ミミヒゼンダニは全長0.3mm〜0.5mm程度の虫で、肉眼では見る事ができません。飼っている犬や猫があまりにも耳を気にするからと動物病院で診てもらったら、耳疥癬だったというケースも多いですね。特に子犬や子猫はミミヒゼンダニに寄生されやすいため、耳垢が多かったり、激しく耳を掻いていたら耳疥癬を疑った方がいいでしょう。
ミミヒゼンダニの原因(感染経路)
ミミヒゼンダニは親子で感染する他にも、既に寄生されている動物との接触や、ダニやその卵が隠れている道具や敷物、家具から感染します。
そもそもミミヒゼンダニは耳の入り口にある外耳道(がいじどう)に寄生すると、耳の表面を掘ってそこに卵を植え付けます。卵はおよそ4日程度で孵化して、その後も成虫になるまでずっと寄生している耳で過ごします。つまり、簡単に言えばこの虫は、その生涯を寄生先で暮らしているのです。
ではなぜ他の動物に感染するかというと、寄生された動物が痒がって頭を振ったり、耳を掻く事でダニや卵が落ちてしまい、それが他の動物や周りのものに……というサイクルで感染してしまいます。
ミミヒゼンダニは人にうつるのか
ミミヒゼンダニの被害は説明した通りですが、一方で人にうつる事はありません。仮に何らかの拍子に耳にダニが入り込んだとしても、一過性の痒みや軽い炎症が起きる程度で、数日も経てば自然に治ります。
ただ、自分がペットを飼っている場合は『飼っているペットからダニを貰う』『そのダニが人に寄生しないが症状を引き起こす』というサイクルが出来てしまうため、根本的な解決をしないと症状が続く可能性があります。
犬猫の耳ダニの症状
耳ダニの正体についてわかったところで、次に耳ダニの主な症状である『痒み』と『耳垢』について詳しくお話します。
激しい痒み
耳ダニはとにかく激しい痒みが特徴的です。これはダニが耳の中を好き放題に動き回ったり、表面をかじってしまうためですね。そのため、しきりに耳を掻いたり、頭を振り回す行動をします。
痒み自体も危険ですが、何よりもこの行動が一番危険です。周囲にダニを撒き散らすだけでなく、ペット自身も傷つけてしまう事になります。最悪の場合、耳から血を流してしまったり、そのせいで余計に痒くなる……という悪循環に陥る可能性があります。
黒い耳垢が大量に出る
耳ダニのもう一つの特徴が、黒い耳垢が大量に出てくるというもの。これの正体はダニの糞やペットの皮膚、血液が混ざったものです。とにかく想像以上に出てくるため、耳掃除をしてもすぐに溜まってしまいます。
耳垢そのものも痒みの原因になるため、放置してしまうと余計に症状が悪化します。
重症の場合は細菌感染のリスクも
耳ダニの最も厄介な点は、ペットが耳を掻いたり耳垢の溜まりすぎが原因で耳が腫れたり、炎症が酷くなってしまう事にあります。つまり、耳の状態が悪くなって細菌感染のリスクが高まってしまうわけです。
重症の場合はそれ以外にも、触られるのを極端に嫌がったり、首を傾けたままの状態(斜頸)になってしまいます。
犬猫の耳ダニの治療と予防法
ここからは耳ダニの治療方法や、具体的な予防法についてお話しします。特に犬は品種によっては寄生されやすかったり、状態が悪化しやすい子もいるため、注意が必要です。
耳ダニの治療
耳ダニ症を治療する場合は、駆除薬で元凶であるミミヒゼンダニを駆除するのが一般的です。駆除薬はノミダニ薬などにも使われているスポットオンタイプを使用し、肩周辺の皮膚に滴下します。一回で全滅させる事は難しいため、基本的には複数回にわたって投与させる事が多いですね。
注意したいのが、耳ダニは完治したと思っても再発する可能性があること。生きているダニを一掃できても、その卵が残ってしまうとまた再発してしまいます。動物病院でも予防薬を処方してくれますが、もし治療した後もペットが痒がっていたら、もう一度動物病院で診てもらいましょう。
耳ダニの予防法
ミミヒゼンダニはペットが密集した場所で、感染してしまうケースが多いです。完全室内飼いが主流な猫はともかく、散歩をする犬の場合は対策が困難でしょう。その場合は、外から帰ってきたら必ず耳を清潔にしてあげる事で予防できます。
他にも、耳が蒸れてしまうとダニが繁殖しやすい環境を作ってしまいます。水遊びやシャンプーなどで耳が濡れたら、必ず乾かしてあげてください。また、トイ・プードルやブルドッグなどの耳が垂れている子や耳毛がある子はどうしても耳が蒸れやすいです。
垂れ耳の子は定期的に耳のチェックをしてあげる、耳毛のある子は適切な長さまでカットするといった対策をしましょう。
耳のケア方法
耳垢が溜まらないようにするには、定期的な耳掃除が必要です。しかし、犬や猫の耳はとても繊細なため、誤った耳掃除をすると皮膚を傷つけてしまったり、状態を悪化させる原因になる事もあります。
基本的には耳のケアは軽く湿らせたガーゼで耳を拭く程度で大丈夫です。綿棒を使った耳掃除は、なるべくペットサロンや動物病院でやってもらうようにしましょう。
また、絶対にやってはいけないのが『健康な耳を洗浄液で洗浄する』というもの。洗浄液は耳垢を落とす便利な液体ですが、皮膚そのものには悪影響を及ぼす事があります。使用する際は必ず動物病院で相談してからにしましょう。
犬猫が耳を痒がっていたら診察してもらおう!
ミミヒゼンダニが寄生している、していないに関わらず、そもそも耳をしきりに気にしている時点で何らかの異常を抱えている事が多いです。耳ダニ症は、その異常の原因の一つに過ぎせまん。
ペットが耳を痒がっていたり、何か違和感があれば、動物病院でしっかりと診察してもらうよう心がけてくださいね。