本当に歳のせい?老猫が食べない理由と正しい対応

老猫が食べない理由 コラム

人間もそうであるように、猫も年老いてくると様々な理由で食事を若い時ほどは食べなくなっていきます。ほとんどは加齢による自然な現象ではありますが、中には病気などが理由で食欲不振になっているケースも報告されています。また、単なる加齢が原因だったとしてもあまりに食べなさすぎるのは栄養面からいっても困りもの。飼い主様による工夫で美味しそうなご飯を演出させることが大切です。

今回は老猫が食事を摂らなくなった原因やその対策について解説していきます。

1老猫が食事を摂らない原因

そもそも食事を摂らない=もう年だからと考えるのは早計です。確かに加齢による身体の衰えによって食欲が無くなったり、以前ほど食べなくても良くなったりといった変化はあります。しかし、食欲不振の原因が病気や怪我だったなんて事も十分にありえます。特に老猫は免疫力が落ちているため、若い頃はかからなかった病気も発症してしまいます。

まずは老猫が食事を摂らない(摂らなくなった)原因から見ていきましょう。

1.1 老化による影響

老人の方と同様、単純に老猫になったから以前より食べなくなったというのはとても自然なことです。

加齢によって筋肉が衰え、それによって基礎代謝※1が全盛期から落ちています。基礎代謝が減る、つまり一日で摂取しなければいけないカロリーが少ないため必然的に食べる量が減っているのです。

次に顎の筋肉や消化器官などの食べるために必要な機能の低下や嗅覚が衰えたことで、食が細くなってきたことも理由の一つです。特に猫は偏食家であり、美味しそうな匂いがすることが前提の猫も多いです。その匂いが感じられないため、単純に食欲が沸かないのです。

この2つの傾向は訓練や生活環境次第である程度抑えられますが、それでもいずれ起きます。後述する病気等の特別な理由でもなければ、飼い主様が工夫しながらご飯を与えるよう意識しましょう。

 

※1 起きている時の生命活動に必要なエネルギーのこと。

1.2 なんらかの病気

ご飯の与え方を工夫しても食べない、もしくは食欲不振の疑いがあるのであればなんらかの病気を発症している可能性があります。特に老猫の発症事例が多いのは口内炎や歯周病等の口腔内の病気や慢性腎臓病などです。どれも重症化してしまうと最悪の場合命に関わるものですので、下記の症状に覚えがある場合はすぐに診察してもらいましょう。

 

・歯周病や口内炎などの口腔内の病気

口の中が不自然なほど真っ赤、異常な量のよだれ、ご飯をこぼすなど食べづらそうにしている、口を過剰に気にしている

・慢性腎臓病

多飲多尿、食欲不振、おしっこの色味っが薄くニオイがしない

 

特に慢性腎臓病は初期症状だと多飲多尿程度しか現れず、更に進行してしまうと尿毒症と呼ばれる危険な病気が発症します。壊死した腎臓の組織はもとには戻りませんので、少しでも違和感があれば急いで動物病院へ連れていきましょう。

1.3 鼻詰まり

呼吸音に違和感を感じたり、明らかにニオイを全く感じていない場合は鼻詰まりを起こしている可能性があります。鼻詰まりは猫風邪と呼ばれるウイルスや細菌による感染の他、重度の歯周病や呼吸疾患、腫瘍の可能性もあり、食欲不振や免疫力の低下を招きます。

これらの病気は自然治癒することがほぼなく、大抵は獣医師によるケアや投薬等の治療が必要になります。また、ウイルス感染は若い頃からのワクチン接種で対策できます。1年の健康診断の他、摂取期間内での予防接種は忘れないように行いましょう。

2食欲不振を伴う老猫の病気について

食欲不振を伴う老猫の病気について

老猫のご飯を食べない理由について、当てはまる原因はありましたか?

一重に年だからとしないで、食べない他になにか違和感がないかよく観察してみましょう。

ではここからは、その老猫がかかりやすい病気の中でも、特に食欲不振が現れる病気についてもう少し掘り下げてみましょう。

2.1 老猫は口腔内に異常が起こりやすい

もともと猫は歯磨きがし難い歯並びをしているためか、適切な処置ができずに歯肉炎や歯周病にかかりやすいと言われています。さらに老猫になってくると免疫力の低下により口腔内の病気の悪化速度が早いため、油断していると一気に重症化してしまいます。

老猫の口腔内での病気で最も大変なのは、麻酔にリスクを伴うことです。若い内なら麻酔を打って抜歯したり治療することは容易ですが、老猫の場合はかなり慎重にならなくてはいけません。獣医師による徹底的な検査のもと、身体や体調に合わせた最適な麻酔を打ち、かつ痛みが少ないよう効率的に抜歯したり治療するわけですから。

飼い主様の中には麻酔が高リスクだからと躊躇してしまう方もいらっしゃるかとは思いますが、病気というのは悪循環になりやすいもの。悪化してしまえば猫は元気を失い、更に抵抗力が落ちて悪化するという負のスパイラルに陥ってしまいます。

前提として歯磨き等のケアはしっかりと、もし病気になったのなら手術の有無に問わず、ひとまず病院で先生にみてもらうと安心でしょう。

2.2 老猫に多い慢性腎臓病

老猫の病気の中で最も多く報告されているのが慢性腎臓病(腎不全とも呼びます)です。初期症状では多飲多尿だけですが、進行すると食欲不振や嘔吐などの症状が現れ始め、最終的には死に至ることもある危険な病です。

この病気の真に恐ろしいのは、多飲多尿だけで済んでいる時点で腎臓の機能がおよそ4分1にまで低下していること食欲不振が現れた時点では尿毒症と呼ばれる危険な病気にまで発展していることです。

腎臓病は完治すること無く、進行を遅らせることしかできません。しかし、慢性腎臓病や尿毒症の初期段階ならば生命維持に必要な腎臓の機能は生きており、早期発見、早期治療さえできれば生活のクオリティを維持できます。

食欲不振の他、多飲多尿が見られる時は老化ではなく慢性腎臓病を疑って診察することをおすすめします。

3老猫が安心して食事できる環境づくり

老猫が安心して食べられる環境づくり

老猫にとって、食事一つとっても成猫のときと同じように食べられないのは辛いはず。飼い主様がしっかりサポートをして美味しい食事を楽しめる環境をつくっていきましょう。

ここからは老猫の食事のためにできることについて見ていきましょう

3.1 キャットフードを変えよう

今までドライフードを与えてきたのなら、もしかしたら今の猫には食べづらいのかもしれません。カリカリとも呼ばれている通り、硬い食感で顎の筋肉を鍛えたり歯に汚れがつきにくかったりといったメリットがありますが、一方で老猫に与える場合は硬すぎて歯が欠けてしまったり、食べづらくてストレスとなってしまう危険性もはらんでいます。

もしドライフードを与え続けたい場合は粒の大きさや硬さの調整を、そうでないならウェットフードの導入を検討してみましょう。ウェットフードは水分を含んでいるぶん食べやすく、匂いが濃く嗜好性が高いため老猫でも食いつきが良いです。

ただし、ウェットフードばかり与えていると顎の筋肉は衰えやすくなるデメリットもあります。またドライフードよりも高価な場合が多いのも辛いところ。どちらかに固執するのではなく、状況や目的に応じたフードを選べると良いですね。

3.2 ご飯は食べやすい位置に置こう

床にお皿を置いて食べさせようとすると、猫は前かがみになって食事をします。この格好はお腹を圧迫するため食事中の嘔吐を招く他、関節に負担がかかってしまい大変危険です。子猫ならそもそも床と頭の距離が近いため特に問題はありませんが、大人になるにつれて床との距離がどんどん離れていき、より深く前かがみをしていくことになります。

老猫になると関節の痛みに敏感になりますし、支える筋肉も次第に衰えていきます。なるべく猫の負担にならないよう、首を曲げなくて済むぐらいの位置にお皿を配置しましょう。

4いくつになったって美味しくご飯を食べたい

年齢や種族に関係なく、誰だってご飯は美味しく食べたいもの。しかし、ペットはご飯を自分で作って食卓に運んで食べるなんてことはできません。ペットが安心してご飯を食べるためには、なにより飼い主様のサポートが必要です。

大好きなペットのために、猫の年齢や状態に合わせた美味しいご飯を用意してあげてください。